「劇場版 空の境界/終章」が難しかったなって話。
こんにちは、カリーパンです。
つい先日、ようやっと「空の境界」に手を付けまして、いやはや面白かったなと。特に俯瞰風景、痛覚残留、矛盾螺旋は好みドストライクだったなぁ。
そんな中一つ引っかかった作品(悪い意味ではないです)がありまして、それが「劇場版空の境界/終章」。
劇場版 #空の境界/終章 鑑賞
— カリーパン@アニメ (@animekaripan) 2020年9月2日
30分間2人の登場人物が会話するのみ。よく言えば挑戦的、ただ正直絵の付いたドラマCDのような。音楽で言うとジョン・ケージの「4分33秒」に似たものを感じる、とにかく試行的。
情緒的な雪の描写や2人の対面を敢えて絵にすることは、何か意味がある気がしてならない。 pic.twitter.com/3xBREyUDVD
根強い人気のあるシリーズでかなりの量考察ブログもありますし、今更深堀りできる頭もないですが、演出面から感じたことを適当にメモ。
他作品も例として引用しますが、どの作品もネタバレには触れませんのでご安心を。
1.イマジナリーライン逸脱の意図
「空の境界 終章」で最も気になったのが、イマジナリーラインを破る演出。タイトルの”境界”からも、どうも無関係じゃない気がして。
「イマジナリーラインって?」という人も多いと思うので、こちらの方のブログ説明が分かりやすいのでご覧いただくか、
orita-ani.net
「パプリカ」というアニメ作品で明確に説明が入るのでオススメです。
また、最近「半沢直樹」でも話題になった題材なのっで、興味のある方は「半沢直樹 イマジナリーライン」でTwitter検索してみても面白いかもしれません。
アニメは実写作品よりもイマジナリーラインの定義が曖昧で、演出上の意図に正解が見えない話ですので、予めご了承を(全力で予防線張るスタイル)。
2.他作品での例
・Dr. STONE
先に紹介したブログでも挙げられていた、16話アバンでの一幕。ルリが下手(左側)、千空が上手(右側)で会話が行われています。
そして会話途中でカット転換、次の瞬間二人の構図が反対に!そう、カメラが「イマジナリーラインの向こう側」に渡った。
実際に映像だとかなり不意に見えるけど、二人のみの会話シーンだし、何より引きの絵で互いが向かい合ってることは明白なので、違和感はさほど感じない。
前カットは、後カットのバックに映っているキャラクター視点であるといえる。ここでの演出意図は、「バックのキャラクター視点(前カット)から、舞台演劇を意識させる視聴者視点(後カット)への移動」なんじゃないかなって考えてる。
・Re:ゼロから始める異世界生活 2nd Season
34話にて。なんなら最新話だけど、偶然引っかかったので抜粋。
場面はスバルとエキドナの茶会。毎週視聴している人なら、この引きの絵で、スバルが下手(左側)、エキドナが上手(右側)の構図で茶を囲む光景が自然と定着していると思う。
基本上手はプラスの印象で*1、味方が上手、敵が下手に配置されやすい(あくまで印象論)ため、ここでエキドナが上手側なのはスバルの安心しきっている心理状態の表れともとれる。
で、問題のシーン。エキドナが代償を要求する場面でカメラが完全に切り替わり、左右反転。
本作はこの辺りの演出がとても丁寧で、スバルの手に巻かれるペトラのまじないがアップになるカットが挟まることで、ほぼ違和感を残さずイマジナリーラインの逸脱に成功している。
自分の考えとしては、単純に展開の方向性が転換した、つまり「エキドナ」を紐解く上で大事なシーンであることを印象付けるものだと思います。この作品は原作未読なので、点で的外れな予想となるかもしれませんが。
3.空の境界/終章でのイマジナリーラインの意味
さて本題。空の境界/終章は基本的に終始二人の会話劇で構成されているけど、かなり決定的にお話のベクトル方向が転換するシーンがある。まず基本から、幹也が上手、式が下手の構図。背景のガードレールをイマジナリーラインと捉えるとわかりやすいかも。
そして物語中盤、幹也の目を覆うように伸びる式の手、ここでイマジナリーラインの向こう側へカメラが移動。
ここで本題。自分の理解力の問題で、作中の会話が難解すぎて演出の意図が非常に汲み取りづらい。単純に覆われていない方の幹也の顔を映すためともとれるし、今作で定義される、自己の器や対立の要素*2の曖昧な境界の暗喩ともとれるような。
4.〆
演出の意図なんてものは、究極の話制作サイドしか知りえない領域。むしろドラマCD向けともいえる構成だった「空の境界/終章」、だからこそ絵に重要な事柄が内包されていた気がしてならない。こういった難解な作品と出会った際のため、自身の創作における感受性を高めたいということが言いたかった、というところで本記事の〆とします。
©米スタジオ・Boichi/集英社・Dr.STONE製作委員会
©長月達平・株式会社KADOKAWA刊/Re:ゼロから始める異世界生活2製作委員会