カリーパンの趣味備忘録

視覚から得る情報の雄弁さは計り知れない。

【アニメ映画】私の2020アニメ10選

ヨーテルさん(@youteru8457)のTwitterハッシュタグ企画に参加させていただきました。

ルール 

・対象:今年の作品(2019秋から継続含む)

・アニメ関連ならどんなジャンルの10選でも可

・順位はつけない

 今回自分は、「アニメ映画」の枠で選出しました。

目次

 

劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel] Ⅲ. spring song

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©TYPE-MOONufotable・FSNPC

原作未プレイの身としては、1章と2章を理解しきれず、かなり心にしこりを残したまま臨んだ鑑賞でしたが、はるかに予想を上回ってきました。
そもそもノベルゲームの尺を三本の映画に落とし込むという企画に対して最初はどこか不安もあったのですが、寧ろ今作は、息つく暇もないほど激しく波打つような作劇となっており、「情報の圧縮」がかえってフィルムの良さとして表れていたように感じました。リッチな撮影処理や圧倒的作画力で描かれる戦闘シーンの数々、何より「空の境界 俯瞰風景」にて燈子が示した「贖罪の在り方」のアンサーとして描かれる、桜並木へ歩みだす二人の背中。最大限の余韻を演出したラストに、強く心を打たれました。

 

ジョゼと虎と魚たち

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©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project

本作はとにかく、「目線を合わせること」に関して、徹底していた。
視線の高低差からなる価値観・景色の違い。そういった意識的なアイレベル・芝居付けに記号的な演出意図は確かにあったものの、そういった演出だけでは表しきれない作品としての叙情が含まれていたことも確か。
リアル過ぎず、しかしフィルムというフィルターを介して、どこか勇気づけてくれるような台詞・芝居付け・描写の数々の塩梅が程よく、気づけば涙が溢れていました。過去作のブラッシュアップとしては、文句のつけようもない佳作でした。

 

羅小黒戦記

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©Beijing HMCH Anime Co.,Ltd

カンフーアクションを思わせる戦闘シーンの芝居付けだったり、やはり中華的な描写も含まれてはいた。本的にも普遍的なテーマではあったのだが、フィルムの中に思想的意図は全く感じられず、寧ろ「ジャパニーズアニメーション」の感覚で楽しめたのが良かった。
勿論それは日本の誇るキャスト陣による熱演もあったとは思うのですが、特にラストでシャオヘイが未来を選択をする一連のシークエンスなんかは、余白を意識した叙情的な撮り方も、どこか馴染みのある描き方で安心できました。

 

劇場版SHIROBAKO

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©2020 劇場版「SHIROBAKO」製作委員会

ミュージカル演出なんかは流石に笑ってしまったのだけど、追いつきたくても追いつけない、けれどずっと眼前に顕現し続けている七福神の描写といい、とにかくフィクションと現実(制作現場)の対比がくっきりした作品だなぁと。フィクションを作る作劇で、その境界を強調するという皮肉。
結局リアルにおいて劇的な変化は簡単に起こらないが、そんなことはお構いなしにページが捲られていく世界の中、奮闘するムサニの制作現場の七転八倒に、面白おかしさを感じたり感動したり、感情起伏のせわしなさが癖になる作品でした。

 

メイドインアビス 深き魂の黎明

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©つくしあきひと竹書房メイドインアビス「深き魂の黎明」製作委員会

際限のない下層へ「潜っていく」作劇の在り方として、高低差をとにかく強調したレイアウト・カメラワークの良さはTVシリーズの頃から釘付けだったわけですが、劇場の大スクリーンを介して鑑賞すると、これまた全く違う迫力で、とにかく冒頭から感心の連続でした。こだわりすぎて年齢制限の負荷まで突き破ってしまった様は、流石に苦笑してしまいましたが(笑)。
かくして下層へ潜るにつれて、よりディープになる個々の探求心。目的のために愛を創作するボンドルド、祝福として彼の体に体現されるプルシュカの「愛」のカタルシスが半端ない。理想ともいえる形で映像化してくださったスタッフの皆様には感謝の言葉もない。

 

魔女見習いをさがして

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©東映東映アニメーション

今作は「おジャ魔女どれみ」未鑑賞で臨んだわけですが、そんな自分でも楽しめるのかといった不安は、冒頭からあっけなく払拭されました。
明らかに意識されたライティング(というより影)の演出は、自己実現の過程において登場人物たちの間にある等身大の悩みの象徴そのもの。魔法の否定を描いたのではなく、あくまでひとつの「フィクションとの向き合い方」を提示した作品だった。子供から大人へのイニシエーションとしてお酒の描写が多かった点もパンチ効いてたなぁ。

 

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クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダム

 

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©臼井儀人双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020


「オトナ帝国」の原恵一の呪い以降、「クレしん映画」と「クレヨンしんちゃん」はある種別個のコンテンツに近いと捉えていましたが、今作はくしくも「クレヨンしんちゃんらしさ」を残しつつ、従来のクレしん映画的なメッセージ性の込められていた作品だったように感じました。
特に好きだったのがぶりぶりざえもんとの別れのシーンなのですが、ここで不用意にしんちゃんに涙を流させなかったのは、やはり「ブタのヒヅメ」のリスペクトだろう。さすが京極監督、分かってらっしゃる。それはそれとして「宝石の国」2期、いつまでも待ってますよ監督。

 

どうにかなる日々

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©志村貴子太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会

百合、BL、おねショタ。オタク世俗的な表現を使えばおそらくこう形容されるであろう、一風変わった恋愛作劇。
しかしここで重要なのは、あくまでフィルムの中に生きるキャラクターたちは、彼らの主観では「あくまで普遍的な生活を送っている」、ということ。だからこそ街並みの雑踏のファーストカットで始まり、また結も喧噪で締める。また、余白を意識した青空のカットの多さ。意識して演出された弛緩的な雰囲気にとにかく没入できる作品でした。

 

BURN THE WITCH

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©久保帯人集英社・「BURN THE WITCH」製作委員会

今年公開されたアニメーションの中で、「原作から忠実にアダプテーションされた作品は」と聞かれたら、自分は間違いなく今作と鬼滅の刃 無限列車編を挙げますが、好みの話として、こちらのほうが好きでした。
簡単に表と裏がひっくり返る世界、御伽噺の否定を軸に描かれる久保帯人ワールド、その圧倒的なワードセンス・レイアウトがそのままアニメーションとして動き回る様は痛快でした。原作漫画より先に鑑賞したのも、好感触の要因。

 

えんとつ町のプペル

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©西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

視野を妨げているのは紛れもなく自分たち自身というマッチポンプな世界構造。そういった普遍的な本には然程目新しさを感じませんでしたが、今作の醍醐味はやはり、必死に上を見上げようと奮闘するルビッチ・プペルたちの心情とリンクするかのような、俯瞰・アオリカットの数々や奥行き、上下に振られる感覚がなんとも癖になる。
STUDIO 4℃さんの作品は、昨年の「海獣の子供」然りフィルムへの没入度にとにかく力を入れる印象でしたが、今作もキャラクター達と一緒に世界観を体感しているような感覚が良かった。再度鑑賞しに行くことはないとおもいますが、4DX上映等が始まれば行ってみたい気も。