テレビアニメ OP10選 2020
企画初参加です、よろしくお願いします。
・2020年放送のTVアニメのオープニングより選出。
・順位は付けない
1.「彼女、お借りします」センチメートル
歌:the peggies 絵コンテ・演出:古賀一臣 作画監督:平山寛菜
本編とリンクするかのようなタイミングで挿入される歌い出し・タイトルロゴがとにかく自分にストライクだったのですが、「これから始まるぞ」というスイッチが入りやすい、まさにオープニングとしての役割を最大限に引き出している演出でした。
ヒロインたちのつぶさな芝居を余さず拾うコンテ構成、カットバックで映される届きそうで届かない場所に懸命に走り続ける和也の描写。本編とリンクするかのような、the peggiesさんの歌唱・歌詞に表れたもどかしさのようなものも相まって、非常に好きなOPでした。
2.「呪術廻戦」廻廻奇譚
膝まで浸水した虎杖のファーストカットから始まり、俯瞰ショットで環状線が映し出されたのちのタイトルロゴの開示。そしてラストカットも、ファーストカットと同様の構図で締める。ファーストカットからラストカットへの帰結は、何となく「Re:ゼロから始める異世界生活」1期のOP1「Redo」を思い出したのですが、とにかく強調される「循環」のモチーフ性。
山下清悟さんといえば「水」を記号的に用いたコンテ構成が印象的ですが、本OPでも、水が自己を映し出す鏡面だったり、はたまた浸水する描写に仮託された「溺れていく」という恐怖感を引き出される演出の数々。しかしその中でも、キャラクター毎の造形の質感(特に髪)や、サビに散見される動的なカメラワークの数々は、記号的になりすぎないような塩梅を感じられ、こういった点も山下さんの信頼できるコンテの切り方だな、と再確認。
サビ終盤、物語の伏線をオーバーラップでせわしなくチラ見せする演出は、どことなく石浜真史氏感。こういった演出も、本編への関心が高まるよい画作り。
3.「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝」ごまかし
歌:TrySail 絵コンテ・演出:吉澤翠 作画監督:谷口淳一郎
「魔法少女まどか☆マギカ」OP「コネクト」をリスペクト的にオマージュしたかのようなコンテ構成。少女たちの愛らしい仕草をしっかりと拾いながら、雨の描写を中心とした、落下する水滴から連想される不穏な雰囲気の演出。記号的に示された世界を、必死で走るいろはをフォローで捉えるカメラワーク。
勿論TrySailさんの可愛らしくも熱のこもった歌唱も素晴らしかったですが、それ以上に無印まどかの良さを再確認できたOPでした。
4.「ひぐらしのなく頃に業」I believe what you said
歌:亜咲花 作詞・作曲:志倉千代丸 絵コンテ:小川優樹 演出:さんぺい聖 総作画監督:渡辺明夫 作画監督:岩崎たいすけ
最近の千代丸氏の楽曲は、英語フレーズの挿入などかなりモダンな仕上がりとなったものが多いですが、寧ろフィルム的なブラッシュアップが行われていた今作において、非常に世界観がマッチしている楽曲だったと思います。
断続的なカット転換で意味深な小道具を映す(バットとか)演出も最高にイカしていましたが、この絵コンテを描いたのが異種族レビュアーズの監督かと思うと、頭が混乱してどうにかなってしまいそう。
5.「アクダマドライブ」STEAL!!
歌:SPARK!!SOUND!!SHOW!! 絵コンテ・演出:田口智久 作画監督:Cindy H. Yamauchi
最大限に引き出された外連味、ネオン等の撮影処理にこだわりきったリッチでサイバーパンクな世界観が描き出されたオープニング。なにより注目したいのが、キャラクター毎の手の芝居付けの良さ。
最初にアクダマ達の手がカット転換で映されるのがたまらなく良くて、最早「手」だけでそれぞれ誰か分かるっていう。小松崎類さんのしっかり人物像を捉えたキャラクターの造形の良さ、そして「それ」を信頼しきった田口さんのコンテ。信頼関係がないと切れない絵コンテだよ、これ。凄い。ラストで一般人が手をひっくり返す芝居付けにも、本作の「簡単にひっくり返ってしまう構造」がよく表れてて最高なのよ。
6.「Re:ゼロから始める異世界生活 2nd Season前半クール」Realize
歌:鈴木このみ 絵コンテ・演出:小柳達也 総作画監督:坂井久太 作画監督:大田和寛
最早1クールの中で半分聞いたかも怪しい、大変貴重なOP。
とまあ冗談はさておき、1期放送当時もニコニコ動画などで「Redo」のアニメーションの逆再生が流行っていたり、MADの素材として多用されていたを思い出しますが、今回のOPも鈴木このみさんの力強い歌唱と、音ハメのフィット感が最高に心地よい。映像に文字を表示するところとか。
早速年明けから後半クールが始まるわけですが、何回OPが聞けることやら(切実)。
7.「デカダンス」Theater of Life
「噛めば噛むほど味が出る」OPとはまさにこれのこと。OPの重要な役割である「視聴意欲のスイッチング」をしっかりこなしつつ、作品の大まかな世界観の整理・説明、前回までの展開と照らし合わせた上での新しい発見が必ず見つかるようになっている構成。
歌詞・歌唱では「生の実感」を強調させつつ、映像にテクノ調をふんだんに醸し出すという対比が良い。
8.「BNA ビー・エヌ・エー」Ready to
歌:影森みちる(CV:諸星すみれ) 絵コンテ:吉成曜 演出:古川晟 作画監督:竹田直樹 2Dワークス:越阪部ワタル
恐らく越阪部ワタル*1さんと手腕と思われる記号的なデザインの数々がフィルムのモチーフ性を保ちつつ、手描きで躍動的なキャラクターの芝居がしっかりと拾われたアニメーション。
諸星さんの歌唱力もさることながら、影や独特の色彩センスがにじみ出る辺り、やはりTriggerらしさが感じられて、好きなOP。
9.「かくしごと」ちいさな日々
歌:flumpool 絵コンテ・演出:村野佑太 作画監督:山本周平
動きは少ないように見えるが、かなりフィルムの質感の転換が激しいオープニング。
本編中でも徹底して描かれていた過去パートと未来パートの分断。可久士や幼い姫はコミック調のタッチで描かれているが、成長した姫はシャープな線で輪郭が拾われており、背景美術もよりリアルに。
OP映像という短尺ではこれがひっきりなしに切り替わるものだから、時の流れからくる叙情の破壊力が凄まじい。「回想」が物語の軸となる、今作ならではの特色が存分に活かされた良OP。
10.「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」乙女のルートはひとつじゃない!
歌:angela 絵コンテ・演出:井上圭介 総作画監督:大島美和 作画監督:澤入祐樹 大槻南雄
もう開幕のカタリナのゲス顔から笑ってしまうのですが、ここまで主人公の魅力をオープニング映像で表しきれる作品もそうそうないだろう。もちろんカタリナが持ち得ている圧倒的なキャラクターとしての求心力故にできだ芸当ではあるが、ついにやけてしまうようなカットの数々がとにかく見ていて楽しい。
ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」の有名な旋律「ダダダダーン」を彷彿とさせるパートの音ハメ、からの次々ページを捲っていくかのような軽快なカット運びで映される多彩なキャラクターたちの描写。作品の魅力を存分に詰め込んだ、面白おかしくも素晴らしいOP。