カリーパンの趣味備忘録

視覚から得る情報の雄弁さは計り知れない。

2020/10-12月期終了アニメアンケート

アニメ調査室(仮)さんの企画参加&2020年秋アニメ総括となってます。
気楽に読んでいただければ幸いです。

 

目次

 

寸評

S評価
無能なナナ

f:id:karipan:20210121214309j:plain

©るーすぼーい・古屋庵SQUARE ENIX・「無能なナナ」製作委員会

初回の叙述トリックはあくまで作劇上の推進力に過ぎず、倒叙ミステリ軸で描かれる奇想天外な意外性は全くこちらの関心を衰えさせることなく、あわよくばミステリ作劇で「死」を日常とすることで、終盤の叙情的なフィルムへの反転への布石とする。画作りは最低限の情報投影、終始「読み手を楽しませる・驚かせる工夫」がプロット・構成に組み込まれていた。これぞエンタメよ。

 

・体操ザムライ

f:id:karipan:20210121214907j:plain

©「体操ザムライ」製作委員会

やっぱり少年スポーツ漫画に慣れすぎると、麻痺してくる選手生命の終着点。
今作はそんな「引き際に葛藤するプロ」の描写を明瞭なロジックでリアルに描きつつ、フィクションは虚構と割り切って、ポップなキャラクター造形に委ねる。特にレオ、玲ちゃん、バンダナ王子辺りのリアリティラインの塩梅は素晴らしい。BBはちょっとライン引き上げすぎかとも思ったが(笑)。ともあれそんなリアルと虚構の対比がくしくも作品の熱量とリンクする様は痛快。短尺で描くべき点をしっかり抑え切る構成力にも脱帽。オリジナル作品でこれができちゃう手腕よ。

 

・アクダマドライブ

f:id:karipan:20210121214815j:plain

©ぴえろ・TookyoGames/アクダマドライブ製作委員会

既存のクライムサスペンスフィルムをオマージュしつつ、独自のサイバーパンクな世界観に落とし込む、という外連味・やりたい放題感が最高。主人公を一般人に位置付けたのも、普遍的な主観を入り口にして、より外連味を際立たせるためだろう、巧い。そういったカオスの中でもキャラクターの掘り下げの抜かりなさには頭が上がらないが、そういった個々の意志を「アクダマ」と名付けたのも、ダンガンロンパの「コトダマ」だよなっていう。ダンガンロンパファンとして、素晴らしいリフレインフィルムを堪能させていただいた気分。

 

A評価
憂国のモリアーティ

f:id:karipan:20210121215041j:plain

©竹内良輔・三好 輝/集英社憂国のモリアーティ製作委員会

プロット的にはこの上ない前哨戦なわけですが、前座としては十分すぎるほどの面白さでした。強いて言えば、ある程度必要な「主人公の善の側面」として身分制度への不満が描かれていたが、大胆にフラットにするのか否か、その塩梅を知りたいな。結局カーストの有無はどちらにもメリット・デメリットがあるわけで、現時点ではモリアーティサイドの着地点が平行線。

関連記事
karipan.hatenablog.com

 

 

B評価
・神様になった日

f:id:karipan:20210121215239j:plain

©VISUAL ARTS / Key / 「神様になった日」Project

セルフオマージュに満ちた日常描写を、崩壊した世界の後で追体験した意味。
奇跡を否定した世界をひなと陽太に歩ませる、っていうストーリーテリングもそういうことだよなっていう。
これまで「奇跡」というデウスエクスマキナによって疑似的に救済してきたオタクたちに現実を見せる。個人的に「従来のファンに刺さらなくてもいい」という捨て身の作劇に思えた、奇跡のない世界だって個々の幸せは確かにある、だーまえの描きたいことは確かに伝わった。
とはいえ構成配分やキャラクター毎の行動理念の掘り方には難あり、個人的に高評価は下せないが、好みの作品ではあった。製作体制をしっかり整えて(特に監督チョイス)のだーまえ再戦待ってる。

関連記事(主にセルフオマージュの点に触れてます)

・ 「神様になった日」3話感想-麻枝准のメタ的セルフデプリケーション・ユーモア - カリーパンの趣味備忘録 (hatenablog.com) 

「神様になった日」5話―死後の世界に陶酔する人、引き戻す麻枝准 - カリーパンの趣味備忘録 (hatenablog.com)

「神様になった日」 7話感想―卵の殻(世界)、内から割るか?外から割るか? - カリーパンの趣味備忘録 (hatenablog.com)

・魔女の旅々

f:id:karipan:20210121215345j:plain

©白石定規・SBクリエイティブ/魔女の旅々製作委員会

ディテールは好みの部分も多いが、教訓臭さが癪に障る点もチラホラ。
挿話ごとに印象・評価がくっきり分かれてしまう構成もネック。
とはいえ撮影処理へのこだわりや、多彩に見えて一貫した作劇の方向性は高評価。

 関連記事

karipan.hatenablog.com

 

トニカクカワイイ

f:id:karipan:20210121215500j:plain

©畑健二郎小学館トニカクカワイイ製作委員会

書きたいことは関連記事に書いたのでそちらを参照のこと。
だら見するのには丁度良かったし、結構ドキッとする画作りもあったり。始発点が結婚から始まるのは逃げ恥と構造が似てるが、寧ろ類似点はそこだけで男作者と女作者のラブコメの描き方として比較すると面白い。

関連記事
karipan.hatenablog.com

 

・GREAT PRETENDER

f:id:karipan:20210121215714j:plain

逆算され尽くされたプロットを、ポップで虚構的なキャラで彩る。構造は全く違えど、作劇手法は体操ザムライと似通っていた気もする。
視野を広げることで得られる救済もある。ドラマ畑の方らしい整った脚本は感心でしたが、割かし無難に着地してなんか盛り上がりに欠けていたような。放送する予定の深夜アニメを先にサブスク配信で一挙配信するの、やめません?(切実)
総じてオリジナルアニメのよさを活かしきれていない作品にも感じた。BNA思い出した

 

 D評価
・100万の命の上に俺は立っている

初回の、どこ向けの需要が分からない読み手への侮辱としかとれない演出。豪速納品から紡がれる画作りの稚拙さ。どちらも見るに堪えなかったが、物語としては案外見れるレベルだった。
カハベルさんのキャラ立ちが特に印象的で、そんな良キャラが異世界側の人間だったのも、やっぱり異世界更生プログラムみたいなことを描きたかったのかな、と。分割2クール目は過密スケジュールじゃなかったら見るかも。

 

総評

今期スケジュールが過密すぎる。いいことでもあるのですが。総括も遅れて気づけばこんな時期。

まず切った作品についてちょろっと。まえせつは言わずもがな。くまクマ熊ベアーも見るのが苦痛と気づいた時には切ってました。安達としまむらとアサルトリリィ、この辺りも作品としては非常によくできていると感じたのですが、如何せん自分に合わなかった。逆に言えば、やっぱり自分はNL作品の方が好きなんだな、と改めて気づかせてくれた作品でもあった。ここまで言っておいて何を言い出すんだという感じなんですが、虹ヶ咲は皆さんの感想を読んで自分に合ってそうだと感じたので、近々見ようかなといった次第。

ここから本題、今期は総じて「普段アニメを描かない」ライターの方々の活躍が良くも悪くも目立っていたかな、という印象。ゲームライターは小高和剛(アクダマドライブ)、るーすぼーい(無能なナナ)、麻枝准(神様になった日)。ラノベライターは長月達平(戦翼のシグルドリーヴァ)。ドラマ脚本家は古沢良太(GREAT PRETENDER)。

しかしアクダマドライブはあくまで原案、無能なナナは漫画原作にとどまっているわけで、アニメ作品そのものへの関与度は低めであると言える。基本的にはアニメ畑のクリエイターに委ねる形。であるにも拘らず、原案・原作者が本来持ち得る作家性を保持しつつ、アニメーション作品として落とし込まれている点は痛快でした。逆に言えば原作・脚本という比重を背負っただーまえの神様になった日は、やはりどこかプロット構成として稚拙な部分が見え隠れしていた。
戦翼のシグルドリーヴァは7話辺りで断念したため自分なりの正当な評価は下しづらいですが、シリーズ構成・脚本という大事なセクションを普段アニメを描いていない人間に委ねるのは無理もあったかなと。特に今作に至っては、長月氏本人がTwitterで実況説明していましたからね(笑)。後からSNSで設定補強しなあかん作劇を作るな、という話。だから最近のラノベ作家が放送中にSNSで実況する風潮が好きになれない。

話が逸れましたが、他方クリエイターがアニメとどれほど直接的・間接的に携わればよいのか、について改めて考えさせられるクールでした。アニメ畑の人間だけでつくられたオリジナルアニメの体操ザムライがダークホースとなっていた点も、そういった観点からすると印象的でした。

おわり

 

アンケート回答

※F評価は視聴を断念した作品です。必ずしも最低評価というわけではありません。

2021冬調査(2020/10-12月期、終了アニメ、56+1作品) 第59回

01,まえせつ!,F
02,無能なナナ,S
03,魔女の旅々,B
04,ぐらぶるっ!,x
05,ギャルと恐竜,x

06,体操ザムライ,S
07,まるまるマヌル,x
08,安達としまむら,F
09,神様になった日,B
10,アクダマドライブ,S

11,トニカクカワイイ,B
12,くまクマ熊ベアー,F
13,魔王城でおやすみ,x
14,神達に拾われた男,x
15,レヱル・ロマネスク,x

16,憂国のモリアーティ,A
17,土下座で頼んでみた,F
18,炎炎ノ消防隊 弐ノ章,F
19,兄に付ける薬はない! 4,x
20,戦翼のシグルドリーヴァ,F

21,ゴールデンカムイ 第三期,x
22,おちこぼれフルーツタルト,x
23,池袋ウエストゲートパーク,F
24,別冊オリンピア・キュクロス,x
25,メジャーセカンド 第2シリーズ,x

26,かえるのピクルス きもちのいろ,x
27,100万の命の上に俺は立っている,D
28,エタニティ 深夜の濡恋ちゃんねる,x
29,いわかける! Sport Climbing Girls,x
30,秘密結社 鷹の爪 ゴールデン・スペル,x

31,もっと! まじめにふまじめ かいけつゾロリ,x
32,カードファイト!! ヴァンガード外伝 イフ if,x
33,シルバニアファミリー ミニストーリー ピオニー,x
34,ヒプノシスマイク Division Rap Battle Rhyme Anima,x
35,ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかIII,F

36,キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦,F
37,ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会,x
38,ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN,x
39,ハイキュー!! TO THE TOP 第2クール,x
40,アイドリッシュセブン Second BEAT!,x

41,BanG Dream! ガルパ☆ピコ 大盛り,x
42,A3! SEASON AUTUMN & WINTER,x
43,魔法科高校の劣等生 来訪者編,x
44,ご注文はうさぎですか? BLOOM,x
45,どうしても干支にはいりたい2,x

46,ツキウタ。 THE ANIMATION2,x
47,禍つヴァールハイト ZUERST,x
48,One Room サードシーズン,x
49,アサルトリリィ BOUQUET,F
50,ゾイドワイルド ZERO,x

51,NOBLESSE ノブレス,x
52,GREAT PRETENDER,B
53,それだけがネック,F
54,(全13話) 忍者コレクション,x
55,(特番 8話) 大人にゃ恋の仕方がわからねぇ!,F

56,耐え子の日常 (2期),x

参考調査

t1,(参考調査) HERO MASK Part2,x