2021冬アニメ雑感①
今期はフィルム作りの良い作品が多い。Dr.STONEの原作購入我慢してよかった、無限に泣いてる。ゆるキャン△→Dr.STONE→ひぐらし業とかいう感情ジェットコースター、中毒性が高すぎる。色々感情が溜まってきたので、適当に発散していきます。
まずは「怪物事変」。PV時点ではあまり気になっていなかったんですけど、いざ見てみたらというパターンでした。主人公の泥田坊→夏羽へのイニシエーションが描かれていた初回、これまで周りの悪意を集中的に受け続けてきた彼にとって、隠神と出会ったことにより初めて得ることができた、他者からの「承認」から込み上げる感情は計り知れないものだったと思います。
基本的に無表情な夏羽ですが、だからこそ際立つこういった撫でられた頭を自身の手で反芻する仕草の切り取り。また、親の愛情に気づいた際に僅かに順光の照度が上がる描写。ここは髪のなびきもよいのですが、言ってしまえばまさに「世界が広がった瞬間」だよなと。
続いて2話、無痛による感覚麻痺、メタ的に「苦痛」を吐き出せない夏羽の描かれ方。この辺りは空の境界 痛覚残留の浅上藤乃やFate/stay night Heaven's Feelの間桐桜を何となく彷彿とさせました。
こういった彼の性格は夏羽の芝居付けにも表れていて、1話で隠神に「親に会いたいか」と言われたときの、こういった絶妙な口元の歪みとか。自身の感情を押し殺すプロセスの描き。このシーンを踏まえた上での2話でのイマジナリーラインの越え方が秀逸で、窓ガラスに映る隠神が下手(左側)・夏羽が上手(右側)に映ることで「これから1話のラストシーンのアンサーを描きます」と読み手に伝えてからの、イマジナリーラインの逸脱(左右反転)。
こういった夏羽の自己意識の芽生えの描き方に胸を打たれました。今後も目が離せない一作です。
お次は「Dr.STONE 2期」。10GAUGE ✕ 依田伸隆による黄金タッグOPについては既にTwitterで触れたので、そちらを参照のほど。
#DrSTONE OP #dr_stone
— カリーパン (@animekaripan) 2021年1月15日
絵コンテ:依田伸隆、撮影:10GAUGE
総じて光源処理の良さが光る。
OPの表す光源は即ち「文明の未来」と言える。
光源を向く千空が逆光で映され、逆に光源を背負う構図の司。
そういった対立構図の2人は、逆方向に交わる。
そうして未来を象徴する朝日をバックにタイトルロゴ挿入 pic.twitter.com/b2xWlJEBFk
科学王国の面々、千空と志を共にして文明の再生を目指す。
— カリーパン (@animekaripan) 2021年1月15日
青空の背景&正面に光源を置く順光カット。
逆に司帝国サイドは、光源をバックに逆光サイド。
下に連なる石像は、彼らの罪深さ、ひいては強い意志を表す。
雄弁な対比カット pic.twitter.com/hffai1PD98
「僕は牙を剥く」に合わせて声を吹き込むゲンのカット、こういった音ハメによる遊び要素が良い。
— カリーパン (@animekaripan) 2021年1月15日
そしてそれとオーバーラップで重なる、「ゲンと同じ」現代人の面々。
ライティングによる各々の立体感は、彼らの人間性を表すには十分すぎる。 pic.twitter.com/iolrGXiUWu
そしてここで挿入される、百夜とリリアンのカット。
— カリーパン (@animekaripan) 2021年1月15日
「月」を光源としたBGはゆっくりスライドする、即ち未来へ「託す」2人。
そしてそれを受け止めるようにラストカット、いつか掴むであろう未来(≒光)を握りしめ、ファーストカットとの対比構図(ラストの方は千空の体で光源が隠れていない)となる。 pic.twitter.com/hkATAq0EX9
本題は飛んで、2話ラスト。
卓越した知力で文明を駆け上がる、即ち未来を見つめ続ける千空にとって、寧ろ旧友との再会を介して「一瞬過去に思い馳せる」というプロセスは、彼にどれだけ叙情的な感情を叩きつけたのかは想像してもしきれないものがありますが、そういった筆舌に尽くしがたい感情を切り取った、アオリ+順光によって映し出される横顔に思わず目頭が熱くなりました。そしてここで挿入されるED楽曲のはてな-「声?」も、「電話通信」を意識したであろうイントロのノイズは、世界観の抽出としては十分すぎる演出でした。
EDアニメーションは太陽巧芸社制作。人類の進化・千空の成長とともに発展していく世界。そして石化にとって、千空は立ち止まり、文明は崩壊する。こういったあらすじ的なストーリーテリングが絵によってものの2,30秒でなされていくわけですが、楽曲のサビにて石化が解けて再び千空が走りだす瞬間、こういったアオリの構図で「先の景色を見せない」演出に、どうしようもなく心を動かされました。
横から映していたカメラが千空に追いつかなくなって、後ろから追いかけるように。そもそも不透明な未来を開拓していく物語であって、常に試行錯誤の連続。そういった人生讃歌を歌ったような「生きて 生きて 彷徨いながら足掻き探して まだ見ぬ先へ」という歌詞も最高で、トライ&エラーとも言うように、失敗はあっただろうけど決して逆行することはしなかった千空。だからこそただひたすらに、上手方向に走る千空をフォローし続けるカメラワークの熱量が半端ではない。
瞬く間に過ぎ去る時をただひたすらに駆ける描写、視覚的な時間の伸縮から生み出される叙情にとにかく感動の連続でした。
こういった演出は他作でもあって、例えば「ワンダーエッグ・プライオリティ」OPとか。
first take. #WEP #ワンダーエッグ・プライオリティ #ワンエグ pic.twitter.com/yTvgUe1pmz
— ヨツベ (@yotube) 2021年1月19日
アニメーター・ヨツべ氏Twitterより引用
写実的な背景に配置された虚構的なキャラクター達。バイオレンスな本編と相反するような日常描写の切り取りに寧ろ「人生」について深く考えさせられますが、こういったタイムラプス*1によって意識的に濃縮させられた時間の経過も、人生という余白の演出として十分すぎるカットだったように思います。丁度数時間前に視聴した「ひぐらしのなくころに業」にも、似たような演出意図でタイムラプスが使われていた点にも驚きました。
あとタイムラプスとは全く異なってきますが、「時間の伸縮」という観点でいうと、先日YouTubeにて公開された「ずっと真夜中でいいのに。『暗く黒く』MV」。
ずっと真夜中でいいのに。『暗く黒く』MV(ZUTOMAYO - DARKEN)
勿論全体通して見てほしいのですが自分が一番気になった点として、動画の2:34~あたり、黒コマの挿入による間の撮り方も印象的だった、定点撮影カット。同じオブジェクトで違和感なくカットを連結しつつ、色合いだけで時の流れを演出する。主線を拾わないルックといい、今までにない革新的なアニメーションだったように思う。
時間という相対的な概念を工夫して切り取ることで生み出される、読み手の感情誘導、感情の昂ぶり。今期のアニメーションも目が離せなさそうです。